2015年8月16日日曜日

具体と抽象を読了!

具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ
具体と抽象。
今まさにめちゃめちゃ悩んでいる事象を冠した本書には興味しか湧かなかった。

抽象化することの難しさと汎用性はあるが、それが伝わるかどうかは受け取りての抽象スキルに依存するので、
そこにはやはり再度具体性を帯びさせなければいけないんだろうなと、感じていた事などがまさに書かれていて良かった。

最後の方に抽象化は生きづらいという点も含めて、なんかとっても共感できる内容だった。

僕の中では抽象化するための方法って2つあると思っていて、1つはヘーゲルの量質転化の法則。
これはたくさんの量が集まる事で必然的に抽象パターンが特定されて抽象化される。

もう1つがアウフヘーベン。これは異なる2方向のレイヤーのコリジョンが浄化されて抽象化されるパターン。
どっちの方がいいとか悪いとかはわからないが、この辺かなと思っている。

で、抽象化パターンはいいんだけど、結局今悩んでいるところは抽象化された事象をいかに具体化するかの箇所に悩みがあるのだが、よく考えれば、それってパターンが十人十色なので、本として抽象化できるわけないよな。
でも、簡潔にまとめられていて、とても良かった。
おすすめ。

■目次
序 章 抽象化なくして生きられない
第1章 数と言葉 人間の頭はどこがすごいのか
第2章 デフォルメ すぐれた物まねや似顔絵とは
第3章 精神世界と物理世界 言葉には二つずつ意味がある
第4章 法則とパターン認識 一を聞いて十を知る
第5章 関係性と構造 図解の目的は何か
第6章 往復運動 たとえ話の成否は何で決まるか
第7章 相対的 「おにぎり」は具体か抽象か
第8章 本質 議論がかみ合わないのはなぜか
第9章 自由度 「原作」を読むか「映画」で見るか
第10章 価値観 「上流」と「下流」は世界が違う
第11章 量と質 「分厚い資料」か「一枚の絵」か
第12章 二者択一と二項対立 そういうことを言ってるんじゃない?
第13章 ベクトル 哲学、理念、コンセプトの役割とは
第14章 アナロジー 「パクリ」と「アイデア」の違い
第15章 階層 かいつまんで話せるのはなぜか
第16章 バイアス 「本末転倒」が起こるメカニズム
第17章 理想と現実 実行に必要なのは何か
第18章 マジックミラー 「下」からは「上」は見えない
第19章 一方通行 一度手にしたら放せない
第20章 共通と相違 抽象化を妨げるものは何か
終 章 抽象化だけでは生きにくい

2015年8月14日金曜日

TQM 品質管理入門を読了した

TQM 品質管理入門 (日経文庫)
ちょっと思うところがあり、品質管理の本を読了した。
あまりこの辺の知識はなかったが、統計関係の絡みで大いに共感できる話が多く、プロセスをしっかりとマネジメントする必要があるなぁと感じた。

製造業などはこの辺、かなりしっかりしているイメージだが、IT業界はなかなかそうでもないのが実態だから。ただ、変化が早く、標準化しても陳腐化する速度が早いかもしれないというのはある。

特に下記の図はなかなか響いた。
ちょうど同僚と改善サイクルを回している際に、狙うのであれば分散を大きくした目標を狙うべきだという話をしたことがあって、それをうまく説明したものだと思う。
色々と変動はあるが、統制されたプロセス管理において出てくる誤差項というものはガウス分布で説明ができる。しかし、これは平均収束をすることになるので、自らノイズを増やす方向性に働きかけを行わなければならないのだ。

また、ハインリッヒの法則のようなものだが、下記の図も思い当たる節がある。
たとえば、サイレントマジョリティというテクニカルタームで説明されるものがある。
それもこの氷山の一角的な見方をするとよくわかる。
統計学で言えば、母集団の推定に当たるわけだが、実際に観測する事はできないので、
その数字をどこまで信じるかは統計学の限界を見極め、その上で用法/容量を守って利用すべきだろう。

新QC7つ道具なども適用範囲は広い。
僕はけっこうパレート図を多用するのだが、そこは宗教上の理由(?)にもよるが、裏を返せば、世の分布のほとんどが正規分布近似できないので、それで代用しているに過ぎない。
もちろん対数正規分布を取れば直線で示せるが、そうするとよけいな誤解が生じる。
データをどのように扱い、可視化するのかは長年の命題であるが、今も昔も変わらない。
伝統的な手法から学びつつ、最新の状況に応じて適用する努力が大事なのだろう。

総じて図解なども多く、非常に参考になった。

目次
1 TQMとは
2 TQMを支える行動指針と基本的考え方
3 個々のプロセスをレベルアップする方法
4 組織全体をレベルアップする方法
5 各段階でのTQMのポイント
6 TQMのモデルとその効果的な活用

2015年8月13日木曜日

コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたことを読了した

コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書 458)
ご存知かわんごさんこと、ドワンゴの川上さんがジブリに修行しにいった際に色々と考えた内容を書籍化した内容。
結論から言うと、大変面白かった。

なんとなくメディアにおける熟考をしていた際に、マクルーハン的アプローチが良さそうだとは思っていたのだが、どうにも抽象すぎて腑に落ちないと思っていた矢先、現代風の文脈でより具体性に富んだ内容でかわんごさんが解説してくれていると感じた。

アニメの情報量の話(線の数)とそれにおける人間の理解力と脳の構造についての指摘などは大変示唆に富むものだった。

またDeepLearningに関する全脳研を吸収した意図としてもオートエンコーダーによる人間の脳の認識能力に言及されるなど、研究熱心なところが垣間見えた。
(専門家からすると厳密的には違うかもしれないが)

最終的にコンテンツとは何か?という話に結論が出されるのだが、クリエイターにとっての様々な美術に触れる経験もなぜ良いのかというところも触れていて、とても参考になった。

あとは宮崎駿さんと高畑勲さんの対比もよく知らなかったので、面白かった。
絵コンテってのは大変な仕事だなとつくづく。
何度か読み返したい1冊なので星5つで。

■目次
第1章 コンテンツの情報量とはなにか?
――「脳に気持ちのいい情報」を増やす
第2章 クリエイターはなにをアウトプットしているのか?
――「イケメン・美女」を描くのが難しい本当の理由
第3章 コンテンツのパターンとはなにか?
――パターンをズラす、そしてお客とシンクロする方法
    1 コンテンツの分かりやすさ
    2 パターンをいかにズラすか
    3 クリエイターはどこで勝負するのか
    4 いかにお客とシンクロするか
第4章 オリジナリティとはなにか?
――天才の定義、クリエイティブの本質はパッチワーク

2015年8月12日水曜日

サッカーは「システム」では勝てないを読了した

サッカーは「システム」では勝てない (ベスト新書)


最近、気骨あるサッカーメディアの中でデータ分析を活用したアナリストという事で寄稿されている庄司さん。
氣にはなっていたが、まさか新著を出されているとは!
ということで、早速購入した。
ちなみに著者はドイツでずっとデータを分析していたようだ。

題材は主には2014年のブラジルW杯のデータを例に各国の戦術などを分析し、総括するものだ。

内容に関しては本書に譲るが、なんとなく観戦していて感じた事をデータを元に
ズバッと解説してくれていたことにとても舌を巻いた。

ちなみに私もブラジルW杯は2/3ほどの試合を眠い眼をこすりながら観戦し、所感をしたためていた。

ザックジャパン終戦。その歩みと4年間の振り返り
2014ブラジルW杯を総括する

ここで指摘しているコンセプト的な箇所や国の特色などは的を得ていてうれしい。
ハフィントンポストの英断のおかげもあるが、ただ一般的に入手できるデータには限界がある。データの活用度合いでやはり本職の人の使い方は違うなと感じた。

特にスプリントのデータにおける話と自ボール、相手ボール走行距離というデータ自体が取れている事に驚いた。

やはりスポーツ業界にデータ分析が取り入れられて久しいが、ここまでの成果が出ているとは非常に驚いたものである。
データの取得に関しても相当な基準が敷かれている。ピッチ上の出来事をどのようにデータに落とし込むかの設計が他国と圧倒的に異なる気がする。
ドイツ代表はユルゲン・クリンスマン時代からレーヴ時代の10年間を費やしてこの戴冠を果たしている。投資金額はそれなりのものだが、成果もかなりのものだった。

なんとなくだが、2013年に書いた下記の記事
キーワードはインテンシティとゲーゲンプレッシング
この内容がそのまま来ていて、これに加えて幾何的な視点が入ればほぼ説明できる。
この視点に関しては今年のCL決勝時の感想で触れていた。
CLセミファイナル バルセロナVSバイエルン戦を見て感じた事

マネーボールが流行した当時、当時無名だった統計家の西内さんがこんな本を書いていた。
遠藤保仁がいればチームの勝ち点は117%になる データが見せるサッカーの新しい魅力 (ソフトバンク新書)
遠藤保仁がいればチームの勝ち点は117%になる データが見せるサッカーの新しい魅力 (ソフトバンク新書)

これは少し統計処理が多い。しかも用いるデータがあまり実践的ではなく、実務よりというか観戦よりに使われるべき内容だった。
それとの対比としての本書はまた面白い内容だったように感じる。

Jのチェアマンの村井さんもデータ公開については積極的に行っていくという方針のようなので、適切に進めていただきたいものだ。
(個人的にはまずクラブ経営問題が先だと思うが、データ取得への投資に期待したい)

感じたこととして、ある程度準備が整えば、マジで強化アナリストとしての道で行けるような気がしてきたので、テンションが上がっている。

■目次
第1章 「支配率」は「データ」ではない
第2章 2014年ブラジルワールドカップとデータ
第3章 データで日本代表を読む
第4章 サッカー新時代の到来
第5章 世界サッカーのトレンドとアギーレ・ジャパン

2015年8月2日日曜日

やなせたかしさんの100年インタビュー

アンパンマンでおなじみのやなせたかしさん。
過去にNHKが制作した100年インタビューの映像を見たけど、なんというかすごく勉強になったし、本質性を感じたので、メモしておく。

なお、この映像は出版化もされている。


■目次
1 前向きに考えよう
2 おしゃれは気力です
3 父に寄せる想い
4 アンパンマンが生まれた背景
5 正義を行う覚悟
6 生きているからかなしい
7 人生は「運・鈍・根」
8 “やなせメルヘン”を貫く
9 復興への思い
10 九十三歳が見つめる希望

主なインタビューの構成内容は上記の通り。

やなせさん自体、遅咲きのクリエイターだったようだ。
経歴などはwikiが詳しい。
やなせたかし

個人的に印象に残った点をいくつか。

何をするにしても気力がないとできない。おしゃれもそのためにしている。
多少派手な洋服を着る時は自分がしゃんとしていないとダメ。

食べ物のキャラクターが多いのは食が全ての基本だから。
赤ちゃんがまずおっぱいを吸うのは教えられてない行動だが、本能で欲するから。

真の正義とは何か?→ひもじい人を助ける事だ
正義を行うにも覚悟が必要。正しいことを行うにしてもその後のことで日の目を見ない事も世の中には多い。

子供の反応はシビア。子供だからグレードを落とすなんてとんでもない。
子供ほど好き/嫌いをはっきり区分する人はいない

誰にでもわかるように書くべきだ。
教養がないと伝わらないなんてダメ。

丸にこだわるのは、おもちゃにしたときに子供がけがしないように。
金属などの重たい素材もNGにしてる。

バイキンマンを生み出せたのは成功だった。物語は俄然面白くなった。
ばいきんと食の戦いは永遠に終わらない。またあの手この手でやってくるという本筋。
ばい菌は色んな手段で来るが、アンパンマンはいつも素手で戦う。

光があれば、影がある。その両面が大事。
光で有名な作者は影を書くのが抜群にうまかった。

今はどんどん便利になったが、その分我慢ができなくなった。
情報量は多く、賢い人間が多い結果がこれ。

アンパンマンマーチの詩は哲学者もびっくりの詩。


なんか、この話を聞いていて、色々な思いが錯綜するのだが、一方で今考えているテーマともかなりミッシングリンクしているような気がしてならない。
実はやなせさんとは共通項が多かったりする。
大学の先輩でもあるし、北区の滝野川出身ということで、地名にも共通している。
また、彼の名作アンパンマンがTV放送を開始したのが1988年という事で、正直私の世代付近が1期生的な世代だとも思う。

なんというか巡り合わせ。彼の魅せた方向性に引っ張られて今があるのかもしれないと
後付けで思えるような内容でとても良かった。
藤子・F・藤雄先生の本とかも興味が出た。
高度に抽象化した本質のエッセンスをシンプルに伝えた詩とデフォルメされたアンパンマン。
タイムスケールを考えて自分が何を根気よく続けていくのかを考える良い契機となった。
おすすめ。

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