2012年4月29日日曜日

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義を読了した!

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義




閉じこもるインターネットをようやく読み終わった。いわゆる「フィルターバブル」について語った本。
目次
第1章 関連性を追求する競争
第2章 ユーザーがコンテンツ
第3章 アデラル社会
第4章 自分ループ
第5章 大衆は関連性がない
第6章 Hello,World!
第7章 望まれるモノを―望むと望まざるとにかかわらず
第8章 孤立集団の街からの逃亡

多くのブログでもその内容は取り上げられている。


「閉じこもるインターネット」で描かれたインターネットの形を変えつつあるパーソナライズの未来

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義


私も情報最適化や各個人ごとにパーソナライズした最適な情報を導きだすことをビジネスミッションにしているため、本書の指摘は一考に値する内容であると感じた。

Web上でのログが蓄積し、活用されるようになってから久しく、そのブームもあいまって「ビッグデータ」のような流行ともなっているのは周知の通りだが、実際に検索エンジンを手がけるグーグルやフェイスブックなどのアルゴリズム先進企業では、もっと先端なパーソナライゼーションが実用化されている。

欲しい情報を得られるという意味ではこの上なくよい環境であると言えるが、そのように個人の嗜好や行動履歴が蓄積することにより「フィルターバブル」が形成され、本当に必要な情報に触れる機会を逸してしまう恐れがあるという指摘が本書の大筋である。

たしかに、その人にとって、必要な情報であると判別することは難しい。私もアルゴリズムに多少知識があるので、色々と考えてみたのだが、例えば、検索エンジンなどは日に蓄積するデータ量が圧倒的に多いので、もはや人が処理できる量を超えている。そのため、大規模分散処理による処理がなされているのだろうが、その際に用いられる機械学習のアルゴリズムなどは、過去の履歴を教師データとした最尤推定だったり、教師データがない場合でもそれを近似して推測する仕組みであるだろうと思われる。

そういうことを繰り返すことにより、興味・関心のある情報が強化されていくことで、新たな発見ができなくなっていき、セレンディピティを失ってしまうということも想像に難くない。

また、ニコラス・カーが著書「ネットバカ」で示したように、オンラインでの行動は人間の脳の報酬系にも多大なる影響を与えているため、Webでの情報取得もますます強化されるメカニズムになっている。

本書では、明示的にこういうアルゴリズムがあることを啓蒙すべきと主張しているが、それはおそらく難しいだろう。これはAdTechのターゲット広告のオプトアウトとも似た文脈な気がするが、広告と決定的に違うのはサーチの場合、結果を所与と思うため、なかなか気づかないという問題だ。他社と比較することもできないし、気づくアラートはない。
またフェイスブックのフィードもそもそも表示されないケースもあるということが驚きだ。

理想論でいけば、パーソナライズの究極は人々を幸せにすると感じているのだが、案配一つで情報煽動にもなってしまうという危険性があると認識できた。
リテラシーというか、モラルのようなものを意識しながら、Web業界人は種々の最適化を行っていくべきであるなぁ。。

おすすめ。


2012年4月25日水曜日

第6回Zansaに参加してきた

毎月恒例となったZansaに昨日参加してきた。

なんでもHPできたそうな。

リンク!


Zansa 統計解析、データマイニング

いつもながらにとても勉強になりました。


ベイズ入門
View more presentations from zansa

ベイズ統計について非常にわかりやすくよくまとまった資料でした。 私は条件付き確立の|の読み方をドヤっということくらいしかできませんでした。




【Zansa】 人工社会-複雑系とマルチエージェントシミュレーションの紹介-
View more presentations from zansa

マルチエージェントシミュレーションには興味があって、けっこう前から気になっていたのだけど、なかなか実際にやってる人に出会えなかった。でも、今回の発表で概要や実活用、デモなどを見せてもらえて、俄然興味がわきました。
この辺もフォローしていかなきゃだなー。

来月も楽しみです!!

2012年4月23日月曜日

メタ認知と会話とクラスタ

今週もはじまりました。
さっそく、初日から雨ですが、今週も過ぎるとGWなので、頑張りましょうね。

週末に法事があったので、実家に帰省していたのですが、ふと気づいたことがあります。

法事となると、いわゆる「親戚」の人たちが集まるわけです。
僕も例外ではありませんでした。

ただ、「親戚」という括りで法事などの冠婚葬祭に来る場合、よほど近い親族でない限り、年齢は高い人々が足を運んでくるわけです。

うちがお世話になっている寺の住職が、だんだん信仰が薄れていく的な愚痴を法要の後に話していました。

というわけで、70,80歳くらいの方々とコミュニケーションをするわけですねぇ。

わりと、僕は幅広い世代とコミュニケーションできるとは思うのですが、こういった世代の方々と会話をする際の引き出しが全くないことに気が付きました。

まあ、いわゆるご挨拶的なお話と、故人の話を一通りすると、もう弾がないわけです。
Reloadしたくてもできんと。

そうすると、自然とジェネレーションクラスタが形成され始めるわけですね。
僕も合いの手を入れながら、高齢クラスタにしばらく参加してみたのですが、話題についていけない。

なぜなら、ネタが完全にローカルトーク。
「誰々さんが何々とかあそこがどうなったとか…」

そういう話題ばかりなんですね。

普段、ジェネレーションギャップのある相手に対して、どのような戦略をとるか考えてたら、だいたいは時事ネタだったり、同じ業界とかだとそういった旬のネタを話題にするんだよなぁと思いを巡らせながら。

あまり知らない人に対して、メタな部分で共有できていないことが多い前提で接しているので、普段は気にならないのですが、高齢の方はそういう前提ではないんですね。しかも、見知った相手もいるもんだから、そっちに合わせて会話が進んでいく。
これはなかなか難しいもんです。

そういうところから、コミュニティ形成の話に思いが至ったのだけど、密なクラスタに新たにノードを張るという行為は実はなかなか参入障壁が高いのではないかな。
そのコミュニティが前提としている暗黙知がたくさんあるので、どちらかもしくは双方の協力がない限りはうまくそのノードはクラスタの仲間入りができない。。。

 まあ、そんなわけで、違う世代とコミュニケーションとると、メタな部分で共有のできる「ライフイベント」の話になんとかなるわけで、やれ結婚やら出産やら車やら家やらというネタに終始するわけ。


なんか、マーケティング視点としても大事な視点なような気もしたので、備忘録程度にメモをしておこうと筆をとった次第。(正確にはタイプした)


ん、おわり

2012年4月21日土曜日

TSUTAYAと所有と利用と

今週もなんだかんだで過ぎ去ってしまった。
時の流れがめちゃめちゃ早く感じている。

今週は風邪引いたりとかもあったせいもあるだろうか。。
一日、一秒を大切にしていきたい。

さて、そんなこんなでさっきTSUTAYAに行ってきた。
なんか無性にCD借りたくなったので。。。

そうしたら、レンタルDVDの旧作が今後ずっと100円になりますというすばらしい内容を見つけました。

すばらしいよね。

まあ、今の仕事でネットのそういったところの在庫点数とかみるにロングテールの威力たるやとは思うけど、リアル店舗のそれなりの規模の場所だと存在感は多いよね。
しかし、時が経てば経つほど旧作部分、すなわちテール部分が増えていくのは仕方ないけど、単価が割高な感じはずっとしていた。

昔、北区に住んでいた時に、すばらしいキャンペーン施策だと思ったのは、旧作レンタル200円などのキャンペーンを隔週だったり時には毎週やっていたこと。
これには僕も食いつきまくって、いっぱい借りたものだけど、オンライン会員のログインを求められるようになってから、すっかりやらなくなってしまったのを思い出します。

まあ、企業側の意図として名寄せしたいんだろうなぁと思ったのだけど、どこかめんどくさいんですよね。
ま、そんなことはどうでもよくて、とにかくすばらしい。

僕はどうしてもネット視聴とかは抵抗があるんだよね。

リアルのように行かなくてもいい手間が価格のプレミアムに乗っかっていて、それが気に入らないってのが大きいのかな。
個人的にはリアルの手間の時間をそのプレミアムでは代替しないと思っているからかもしれない。あとはネットワーク転送時間などの待ち時間も嫌いだし。

閑話休題

一時期、「所有」と「利用」って流行ったけど最近言わなくなった。

カーシェアとかも一般化されて(まだそこまで普及はしてないが)、浸透したのだろうか。うーむ。。。

一番のテーマはやはり住居ではないですかね?

昔、仕事で某Mビルさんとご一緒したことあるんだけど、その時のテーマが「サービスアパートメント」だったこともあって、この辺の議論をしたことを思い出す。

あの会社はすごく色々と考えていて、不動産構想も街作りという観点から設計に入るそうだ。
今の六本木エリアの雰囲気はまさにあそこが構想したようなところらしい。
特にコミュニティとかまで踏み込んでいるところがすばらしかったな。

そんなこんなで、音楽をインポートしてからDVD見て寝ようっと。

よい週末を!

2012年4月16日月曜日

リアルタイムデータ公開で思うこと徒然に

最近、更新頻度が下がってしまっているので、何かネタはないものかと思っていたところに、いい記事を見つけた。

初の「リアルタイム・データ」サッカー試合:アディダス

Wiredはマネーボールのヒット以降、ベースボールとフットボールのデータネタをちょいちょい書いているので、チェックしている。

今回は、フットボールのデータのリアルタイム公開をアディダスが行おうとしているという、なかなか刺激的なニュースだった。




記事によると、チェルシーの親善試合でユニフォームやスパイクに埋め込んだセンサーデータを収集し、リアルタイム公開するというものだ。
とても興味深い。

しかし、あえてここで警鐘を鳴らしたいと思う。

もちろん、データを扱うものとして、この試みは大変歓迎すべきものだし、できることならそのデータを分析・活用したいものだとも思っている。

話を戻そう。

ここで、公開されるデータは、「選手のポジション、パワー、スピード、動いた距離、プレーの激しさ、加速、GPSマップなどのリアルタイム情報」となっている。
いわゆるフィジカルデータがメインだ。

このデータを元に、フットボールマネージャーへのフィードバックというのは、意思決定をサポートする上で、この上なくよい客観指標となるだろう。
実際、すでに行われているとも言われる。




世界の名将モウリーニョの戦術・練習方法などを取材した本書によると、モウリーニョは選手のフィジカルデータを参考値にはすれど、それで判断することはないという。
それはまさに、戦術的ピリオダイゼーション理論に基づく、フットボールはフラクタル構造を有するが故であることに他ならない。

フィジカルデータが高い数値を出していても、その試合における監督の狙いと合わなければその数字は全くもって意味をなさないこともあるだろう。
また戦術的なロールを与えられたプレイヤー(主にマンマークなど)の数値は場合によってはひどい数値にもなるだろう。

その数字を首脳陣が判断する上でなら、まったく問題はない。

しかし、そのデータが公表されるようだと、色々と問題があるだろう。
その数値が一人歩きし、選手個人へのバッシングにつながる恐れがあるからだ。




うろ覚えで恐縮だが、本書の中でステファン・シマンスキーがこういったデータ公開に警鐘を鳴らしていたように記憶している。

しかし、A,ビルバオのビエルサ監督やバルサのグアルディオラなど、データを駆使し、戦術を組み立てるケースが跋扈していることもあり、よい方向に進めばいいなぁと感じている次第。

ゴール判定もセンサー活用かなぁ。。

テクノロジーが進化すれど、人間はなかなか進化せんのよね。。。

2012年4月3日火曜日

いま集合的無意識をを読了!

いま集合的無意識を、 (ハヤカワ文庫JA)

神林長平さんの著書。
彼の作品は初めて読んだ。元々、この作品を手に取ったのは、伊藤計劃の名を見たからだった。

彼の作品は2つとも読了済みである。
虐殺器官を読了
ハーモニー(伊藤計劃)を読了!!

全体的なテーマである集合的無意識は神林さんの10年の作品集でもある、集大成な内容である。その帰結が、そのタイトルの作品であり、故、伊藤計劃と著者が対話するというなんともワクワクする展開である。

目次
ぼくの、マシン
切り落とし
ウィスカー
自・我・像
かくも無数の悲鳴
いま集合的無意識を、

あのDan Kogaiも本書を絶賛している。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51778236.html

主なテーマで集合的無意識とパーソナルとネットワークについての2つがあるように思える。
集合的無意識による没個性の怖さなども感じられるし、ドゥエル氏の話も色々と考えさせられる。

集合的無意識的な話題を見ると、攻殻機動隊の傀儡回しや名もなき11人やPlutoの60億人シミュレートを想起する。
前者は、広大なネットが1つの個を作り出すし、後者は60億の個をシミュレートし、目覚めさせるにはある種の極端な方向付けが必要とされた。

しかし、何より最後の作品である。
3.11の大震災を経た後に、圧倒的なリアルに対抗するために優れたフィクションが必要であると考え、現代の作家へのエールも兼ねている内容に、伊藤計劃との対話を持ってきたのだ。

すごく感じることが多かったのだが、今浮かんでくる言葉で記述するとすごく陳腐なものになってしまうような気がする。
計劃のファンであれば是非とも読んでほしい作品だ。

星5つ!

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