2016年12月17日土曜日

クラウド アトラスという映画が秀逸だった



2013年とかの少し前に公開された映画だが、たまたまSF好きな私が見ても唸る内容だったので、備忘録しておく。

ネタバレはしないように思ったことなどを中心に書く。
一応あらすじ
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1849年、太平洋諸島。若き弁護士に治療を施すドクター・ヘンリー・グース(トム・ハンクス)だったが、その目は邪悪な光をたたえていた。1973年のサンフランシスコ。原子力発電所の従業員アイザック・スミス(トム・ハンクス)は、取材に来た記者のルイサ(ハル・ベリー)と恋に落ちる。そして、地球崩壊後106度目の冬。ザックリー(トム・ハンクス)の村に進化した人間コミュニティーのメロニム(ハル・ベリー)がやって来て……。
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本編では6つのストーリーが同時に進行する。
最初はこの設定を入れないと少しばかり混乱する。

過去、現在、未来のそれぞれの時代を描いた物語。
そして、それがどこかでつながっている。
そのためのメタファーとして関連ワードや人物、俳優のシャッフルなどの演出がなかなかにくい。

クラウド アトラス6重奏の伏線が徐々に拾われていく様はなかなか快感だ。
全体を通して3時間弱あるが、先が読めないので、時間をそれほど感じさせない。

久々にこのマルチストーリーの秀逸作を見て気持ちがよかった。
監督はマトリックスシリーズのウォシャウスキー姉弟とのこと。
なるほど納得。
SFの箇所の描き方もなかなかよかったけど、個人的にはこの6つの展開から回収の仕方がよかった。
バベルを思い出した。

映画「BABEL」を観ました

同時多発性のストーリーがおそらく想起させている。
しかし、本作は時間軸のズレもあるので、バベルが水平展開であるとすればクラウドアトラスは垂直展開であるだろう。

また、このような展開をすると村上春樹の神視点のようなものが気になるところ。
村上春樹の世界

しかし、今回は語り部がいて、そこからストーリーが始まっているので、よくわからない第三者ではない。あとは各ストーリーの主客がはっきりしているので、その点も没入感には影響がないのが素晴らしい。

トムハンクス、ハルベリーといった大物が主演なんでしょと思ったけど、全体感はそうなのだが、いわゆる主役感は薄い点もまた新鮮味があってよかった。
こんな試みをしてくるウォシャウスキーさんたちには今後も攻めた設定の映画を作り続けてもらいたいものだ。

全くゼロからのJクラブのつくりかた サッカー界で勝つためのマネジメントを読了した

全くゼロからのJクラブのつくりかた サッカー界で勝つためのマネジメント
SC相模原の望月さんの書籍。
おそらく相模原のことについて知ったのは本書内にもあるNewsPicksの記事であったように記憶している。
もちろんサッカーは普段見るので、JFLのチーム、J3のチームとしてのSC相模原は認識していたが、その生い立ちや代表が元Jリーガーの望月さんである点など色々と知ることができてよかった。

相模原の居酒屋での依頼がきっかけでJクラブを作り、そのままあれよあれよとJクラブまで成長させるのは素晴らしいことだ。
私も過去にそのように市民クラブが立ち上げられればいいなと思ったことはあるが、なかなかこのようなシンデレラストーリーにはできない。
相模原はまずはJ2に上がってきてもらいたい。そのためにもスタジアムの基準をクリアしたいですね。
堀江さんとの対談でもあったけど、吹田のスタジアムが寄付で造られて市に寄付、運営をクラブに委託するということで税金回避するモデルは他のクラブも取り入れるべきですね。
その辺は千葉ロッテの取り組みが証明済み。

あとは選手として一流の監督や仲間とともに色々と吸収してきたという望月さんのキャリアも非常に参考になる。
これまた良作であった。


▪️目次
第1章 最速でJ参入を果たした成功メソッド
第2章 サッカー界で生き残るための組織論
第3章 まるでリアルサカつく クラブ経営の醍醐味とは
第4章 クラブファースト かけがえのない相模原という存在
第5章 突然の「余命宣告」 波瀾万丈の選手時代
第6章 3人の外国人監督と1人の妖精 偉人たちに学んだ人生哲学
第7章 J3からの挑戦 日本サッカーの未来のために
第8章 ビジネスをサッカーに置き換えると問題が解決する
最終章 僕が僕である理由
[特別対談]堀江貴文さんと考える〝Jリーグの明るい未来〟
全くゼロからのJクラブのつくりかた サッカー界で勝つためのマネジメント

急いてはいけない 加速する時代の「知性」とは を読了した

急いてはいけない 加速する時代の「知性」とは (ベスト新書)
久々に本を探索していた時にオシムさんのこの書を見つけた。
思えば幾年も経過したが、自分が読書を習慣づけるきっかけとなったのが木村さんの「オシムの言葉」であった。
あの書をゲレンデへ向かうバスの中で貪るように読んだことを今でも覚えている。
やはり今でも多くのインプリケーションをもらえるオシムさんには本当に感謝しかない。

本書においてもオシムチルドレンのJリーガーたちの質問なども記載がある。
私は特に印象に残ったのは水野晃樹選手の質問だ。

「昔のプレースタイルを追い求めるのをやめ、新しいプレースタイルを追求したほうがよいのでしょうか」

オシムによって成長し、一時はセルティックに移籍、その後紆余曲折を経てジェフに復帰するが昨シーズンは仙台。そして今季は引退をしてしまった選手だ。

彼はナビスコカップで2年連続タイトルを取った際にニューヒーロー賞を獲得し、向かうところ敵なしなウインガーだったが、その持ち前の個性が少し仇となり、年齢に応じた衰えに対応できなかったようだ。
結局年齢に応じた追求をする前にスパイクを脱ぐ決断をしているが、それはそれで1つのストーリーの終焉で感慨深い。

このように重厚なスチーリー性を帯びる媒介としてのオシム氏の発言はとても気づきを得られる。
サッカーファンのみならずとも、ぜひとも読んでもらいたい1冊だ。

▪️目次
はじめにー田村修一・訳者
第1章 「日本」のあり方
・日本の特質について・日本人のリーダーに望むことetc.
第2章 「チーム」のあり方
・「上司」と「部下」はどうあるべきか・キャプテンの適性etc.
第3章 「個」のあり方
・コレクティブな日本人とは・ストレスに悩む者はいるのかetc.
第4章 「サッカー」のあり方
・サッカーをどう考えるか・日本のサッカーが目指すものetc.

2016年12月15日木曜日

10年戦える分析入門 ~SQLを武器にデータ活用時代を生き抜く~

この記事は技術書献本感謝Advent Calendarの16日目の記事です。

私は本書のレビュワーを担当しました。

そのため、献本いただけたという背景があるのだが、改めて素晴らしい本なので、
このAdvent Calendarでも再度感謝というコンテキストを含めて紹介したいと思う。

著者とは職場で出会った。その職場はメンター制度があり、入社した社員に先輩社員が1人つくという制度があった。まあ、実際は飯食いに行ったり、酒を飲みに行ったりコミュニケーションする目的だったようだが、そのメンターとして筆者に割り当てられたのが、本書の著者である。

当初はそんなにすごい人だとは知らなかったが、過去の著作もなかなかBigなものもあり、
一流のエンジニアであることは仕事ぶりからも明らかだった。
当時、データ分析を売りにしていたために、いろいろな相談をしているうちに、本書を執筆する計画を打ち明けられた。

しかし、本人はなかなか筆が進まないという状態だった。
SBクリエイティブの新レーベル1発目ということもあり、データ分析にまつわる良書になる予感がしたので、その際にレビュワーとなることを申し出た。
そして、本書の対象読者がデータを扱うWebディレクター(またはそういう人と一緒に働くことになったエンジニア)であったため、同僚ディレクターやエンジニアも強制的にレビュワーに参加させられ、それ用の目的チャットが作られ、著者の進捗をサポートし始めた。

当初は毎週1章ずつ原稿が送られてきて、それをレビューするという方式だったのだが、著者が有給や週末なども使い始め圧倒的な進捗を出し始めたのち、残りの章がドカッと送られてきたことを覚えている。
全てはレビューしきれなかったが、8割以上はレビューをし、表現の修正などは一定のフィードバックをできたのではないか。

実際、本書が出版されてから、私は宣伝ぶちょーとして、この本をプッシュしてきたが、
職場が変わった今でもなお、ディレクターに本書をお勧めしている。
つい最近も社内の情報共有ツールにイントロダクションとエスカレーションの意味で本書への推薦をつけたばかりだ。

タイトルも非常に煽り感のあるタイトルではあるが、プログラミング言語の趨勢はとても早く、時には数年で枯れてしまったり、リプレイスされてしまうこともあるが、SQLを扱えれば10年は戦えるとは言い得て妙であるだろう。
さすがの一言である。

著者にその気があるかはわからないが、本書をリプレイスするものはぜひ青木さんに執筆いただきたいものだ。

改めて本書の執筆プロセスに関われたこと、そしてご恵贈いただいたことを感謝したい。

2016年12月14日水曜日

「みんなのR」を紹介しよう

この記事は技術書献本大感謝AdventCalendar15日目の記事です。
私からは「みんなのR」を紹介させていただきたい。


まず最初に謝らなければならないのは、本書の発売は20150630日である点。
つまり昨年である。今更なぜこれをという方もいるだろうが、なかなか書けなかった理由もあり、そのためにも今回このAdventCalendarに参加したので、ご容赦いただきたい。

そう。私が本書を献本いただいたのも、ちょうど昨年の今頃だったのだ。
訳者の一人、牧山さんのご好意により、冬の忘年会シーズンにいただいた記憶がある。

2016年、R界隈ではよりHadley Wickham氏の成果が凄まじく、HadleyVersetidyverseと呼ばれるように彼の成果によるパッケージに恩恵を受けているユーザーも多いことだろう。

みんなのRも元々はニューヨークのJared P. Landar氏による著書をTokyoRの有志メンバーが翻訳することで出版されたものだ。
1年半という歳月は流れたものの、まずRに触れてみるという観点において、この書籍が最も適していることは認めてもよいところだろう。
下記に目次の構成を示す。

目次
1 Rを手に入れる
 1.1 Rのダウンロード
 1.2 Rのバージョン
 1.3 32bit64bit
 1.4 インストール
 1.5 Revolution R Community Edition
 1.6 まとめ

2 Rの環境
 2.1 コマンドラインインターフェイス(CLI)
 2.2 RStudio
 2.3 Revolution Analytics RPE(R Productivity Environment)
 2.4 まとめ

3 Rパッケージ
 3.1 インストールパッケージ
 3.2 ロードパッケージ
 3.3 パッケージの作成
 3.4 まとめ

4 Rの基本
 4.1 基本的な数学
 4.2 変数
 4.3 データ型
 4.4 ベクトル
 4.5 関数(Function)の呼び出し
 4.6 関数ドキュメント
 4.7 欠損値
 4.8 まとめ

5 高度なデータ構造
 5.1 データフレーム(data.frame)
 5.2 リスト(List)
 5.3 マトリックス(Matrix)
 5.4 アレイ(Array)
 5.5 まとめ

6 Rへのデータ取り込み
 6.1 CSVの読み込み
 6.2 Excelの読み込み
 6.3 データベースからの読み込み
 6.4 他社統計ツールからの読み込み
 6.5 Rバイナリファイル
 6.6 Rに入っているデータ
 6.7 Webサイトからの抽出
 6.8 まとめ

7 統計的なグラフィクス
 7.1 基本グラフィクス
 7.2 ggplot2
 7.3 まとめ

8 Rの関数を書く
 8.1 ハロー、ワールド!
 8.2 関数の引数
 8.3 値の返却
 8.4 do.call
 8.5 まとめ

9 制御文
 9.1 ifelse
 9.2 Switch
 9.3 ifelse
 9.4 複合テスト
 9.5 まとめ

10 ループ:Rの方法ではない反復方法
 10.1 forループ
 10.2 whileループ
 10.3 ループの制御
 10.4 まとめ

11 グループピング操作
 11.1 Applyファミリー
 11.2 aggregate
 11.3 plyr
 11.4 data.table
 11.5 まとめ

12 データ整形
 12.1 cbindrbind
 12.2 Join
 12.3 reshape2
 12.4 まとめ

13 文字列操作
 13.1 paste
 13.2 sprintf
 13.3 テキストの抽出
 13.4 正規表現
 13.5 まとめ

14 確率分布
 14.1 正規分布
 14.2 二項分布
 14.3 ポアソン分布
 14.4 その他の分布
 14.5 まとめ

15 基本統計
 15.1 要約統計
 15.2 相関と共分散
 15.3 t検定
 15.4 分散分析
 15.5 まとめ

16 線形モデル
 16.1 単回帰
 16.2 重回帰
 16.3 まとめ

17 一般化線形モデル
 17.1 ロジスティック回帰
 17.2 ポアソン回帰
 17.3 その他の一般化線形モデル
 17.4 生存時間分析
 17.5 まとめ

18 モデル評価
 18.1 残差
 18.2 モデル比較
 18.3 クロスバリデーション
 18.4 ブートストラップ
 18.5 ステップワイズ変数選択法
 18.6 まとめ

19 正則化と縮小
 19.1 Elastic Net
 19.2 Bayesian shrinkage
 19.3 まとめ

20 非線形モデル
 20.1 非線形最小二乗法
 20.2 スプライン
 20.3 一般化加法モデル
 20.4 決定木
 20.5 ランダムフォレスト
 20.6 まとめ

21 時系列と自己相関
 21.1 自己回帰移動平均
 21.2 VAR
 21.3 GARCH
 21.4 まとめ

22 クラスタリング
 22.1 K-means
 22.2 PAM
 22.3 階層型クラスタリング
 22.4 まとめ

23 knitrパッケージによる再現性・レポートとスライドショー
 23.1 Latexプログラムのインストール
 23.2 Latex 入門
 23.3 Latexを使ったknitr
 23.4 マークダウンのヒント
 23.5 knitrとマークダウンの利用
 23.6 Pandoc
 23.7 まとめ

24 Rパッケージの構築
 24.1 フォルダ構成
 24.2 パッケージファイル
 24.3 パッケージドキュメンテーション
 24.4 チェック、構築とインストール
 24.5 CRANへの登録
 24.6 C++コード
 24.7 まとめ

いかがだろうか。
強いて難点を挙げるとするのであれば、この1年半で進化したデータ操作に関する箇所は今の水準にはないかもしれない。
{dplyr}{tidyr}などがないからだ。
また、DeepLerning系のパッケージやKaggleなどで流行ったxgboostなどもないが、それは次のステップでもよいだろう。

私がR入門者にオススメを聞かれても今の時点では本書をオススメするだろう。

ということで、本書のご恵贈を改めて感謝する次第だ。

2016年12月3日土曜日

stan本で私もデビューできました

本記事はStan Advent Calender3日目の記事です。
stanというツールを知ってから、しばらく時が経過しますが、なかなか導入に踏み切れていませんでした。
私はR言語をよく使いますが、昔はstanをRから呼び出すのも苦労があった時代もあったりして、ハードルが高いなという印象があったり、なかなかHMCを活用したサンプラーによりシミュレーションを行うモデリングまで現実の問題を落とし込めていなかったりしていたからでした。

しかし、2016年はそんな過去の時代とは違います。




2016年10月末に革命的な本が出されました。
これにより、現在stanによるベイズモデリングが一部地域でかなり流行っています。

この本の構成としては下記のような目次になっています。

第1部 導入編
統計モデリングとStanの概要
ベイズ推定の復習
統計モデリングをはじめる前に
第2部 Stan入門編
StanとRStanをはじめよう
基本的な回帰とモデルのチェック
第3部 発展編
統計モデリングの視点から確率分布の紹介
回帰分析の悩みどころ
階層モデル
一歩進んだ文法
収束しない場合の対処法
離散値をとるパラメータを使う
時間や空間を扱うモデル

Stanの本とはいえ、まず初めにベイズ推定の復習や統計モデリングを始める前に考えておかなければならない観点が丁寧に解説されています。
ここは非常に重要だと思います。
機械学習の方面でもまず複雑なアルゴリズムありきで話題を始めてしまう例もよく見受けられてしまうのですが、モデリングにおける試行錯誤の重要性はスモールスタートであることを改めて思い知らされます。

また、stanでのモデリングに必要な確率分布の説明も非常に丁寧です。
日常確率分布に多く触れる人も少ないはずですから、このような解説記事と共に掲載されているのは著者の配慮によるところでしょう。

MacOSによるstanの準備


著者がWindows環境なので、Macの場合の準備の手順を紹介します。
step1.Rをインストールする またはアップデートする
まずはお手持ちのMacにRをインストールしましょう。
またすでにRが入っている場合は適切なVerにアップデートしてください。
こちらのリンクからCRANの各mirrorサーバーからダウンロードできます。

次にRstudioをインストールしましょう。
Rstudioはこちらから入手できます。
またXcodeをお持ちでない場合はAppStoreからXcodeを入手しましょう。

rstanのインストール

install.packages('rstan',dependencies=TRUE)
これで準備完了です。

Stanの基本的な文法

stanコードの基本的な構成は下記の通り3つのブロックになっています。

data {
データYの宣言
}

parameters {
サンプリングしたいパラメータθの宣言
}
model {
尤度p(Y|θ)の記述
事前分布p(θ)の記述
}

コーディング規約

松浦さんによる最低限守るべきルール
1、インデントは必ずする
2、データを表す変数の先頭の文字を大文字にし、パラメータを表す変数の先頭の文字を小文字にする
3、各ブロックの間は1行開ける
4、変数名はcamelCase(単語の区切りが大文字)ではなく、snake_case(単語の区切りがアンダースコア)にする
5、「~」(確率的な生成)「=」(代入)の前後は1スペース開ける

普段、Rを使っている とstanコードの記述は少し独特なので、この辺のコーディング規約は業界標準として成り立つと良いと思いますね。

さて、これでスタートラインに立つことができました。
非常にお手軽ですね。
実践的な解析例はStan Advent Calenderの他の記事に譲るとして、他国の例を紹介します。

来る2017年1月にstan conference 2017が開催されるようです。
内容を見ていると、stanのイントロから各専門領域における使い方の紹介、そして発展系の内容の構成となっているようですね。

これはstan本でもすでに実現している構成ではありませんか?
このstan本を読めばある程度のグローバルスタンダードに立つことができるかもしれません。ありがたいですね。
それでは、皆さんもこの本を携えて、stanでモデリングの海に飛び込みましょう!

2016年12月1日木曜日

ザ・会社改造--340人からグローバル1万人企業へを読了した!

ザ・会社改造--340人からグローバル1万人企業へ
V字回復の経営や戦略経営プロフェッショナルなどの著名な作品で知られる三枝さんの渾身の1冊。

間違いなく私が今年読んだ中でベストに面白かった1冊といっても過言ではないものでした。

なぜか。

三枝さんの著書はV字回復の経営を読んだことがあります。
これはターンアラウンドマネージャーとして会社を再生させた自身の体験をフィクションにしたもので、それでも名著として知られているもの。
しかし、個人的にはどこか現実感がない。切迫感がない、熱量を感じない気がしました。
おそらく自身の体験を抽象化したためにそういったことが起きたのでしょう。

さて、そこで、本作がなぜそれを大きく上回るのかといえば、自身の経営人生をかけて挑んだミスミでの回顧録を包み隠さず出しているからに他ならないからです。

登場人物も実在の人なので、かなりのリアリティがあります。経営者としてどういう意図を持って人事を抜擢し、そこからハンズオンさせていったのか。また社員の当時の回顧録も記載することで多面的に立証するストーリー構成になっていました。
とても熱量の高い物語です。

奇しくもミスミという会社とご縁があった過去もあり、その経験がさらに本書の内容を面白いものにしてくれました。
こういう環境だったのだな。当時の自分の苦しかったこともどこか納得できる内容であったということもあり、非常に読み応えのある、かつ学びの多い書籍でした。
間違いなく星は5つで。ぜひぜひ読んでみてほしい1冊です。


▪️目次
(会社改造1) 「謎解き」で会社の強み・弱みを見抜く
創業40年で売上高500億円だった上場会社をわずか4年で1000億円に伸ばし、世界大不況を乗り越えて2000億円超の企業に変身させた経営者は、あらかじめどんな「謎解き」をして会社改造に乗り出したのか。

(会社改造2) 事業部組織に「戦略志向」を吹き込む
戦略とは何か。それを知らなかった事業部の社員たちは、のたうち回りながら「戦略シナリオ」を描き、売上高150億円の事業部を1000億円超のグローバル事業に成長させた。

(会社改造3) 戦略の誤判断を生む「原価システム」を正す
不正確な原価計算は重大な戦略的誤謬を生みかねない。世界の多くの企業が導入に失敗した「ABC原価計算」を、社員たちは日常的に使う戦略目的のシステムとして確立した。

(会社改造4) 成長を求めて「国際戦略」の勝負に出る
「海外に無関心、本社の海外事業組織はゼロ、戦略もなし」の状態から、13年後に海外社員7000人、海外売上高比率50 %に迫る国際事業へ。「世界戦略」はどのようにして構築され、実行されたのか。

(会社改造5) 「買収」を仕掛けて「業態革新」を図る
商社専業40年の歴史に別れを告げ、メーカー買収に踏み切ったミスミ。「事業モデルの弱点」を一挙に解き放つ業態変革を敢行した戦略の裏には、どのような「歴史観」が、そして「ねらい」があったのか。

(会社改造6) 「生産改革」でブレークスルーを起こす
現場の抵抗によって「死の谷」にまで追い込まれかけた生産改革は、何をきっかけにして蘇ったのか。トップと一体になった知的戦いと汗まみれの現場改善は、ミスミの業態に最も適した「世界水準の生産システム」を生み出す。

(会社改造7) 時間と戦う「オペレーション改革」に挑む
以前であれば600人でやっていたはずの仕事を、いまはわずか145人でこなせる体制に。カスタマー・センターで行われた、汗と涙と我慢の「業務改革のステップ」とは何だったのか。時間と戦うオペレーションとは?

(会社改造8) 「元気な組織」をどう設計するか
「組織末端やたら元気」と「戦略的束ね」の両立が会社の理想。だが、日本の経営の実験場として試行錯誤を重ね、高い成長率を生み出した「ミスミ組織モデル」にも大企業病の脅威が迫る。

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