2013年10月26日土曜日
稼働率89%、リピート率70% 顧客がキャンセル待ちするホテルで行われていること―スーパーホテルが目指す「一円あたりの顧客満足日本一」とは? を読んだ
話題となったスーパーホテルの脅威の稼働率、リピート率の要因を知りたくて手に取った。
スーパーホテルは4900円で宿泊でき、成長を遂げたホテルである。ただ単に安いだけでなくIT化による効率性の追求とサービスレベルの最大化の両立を目指す事で、サンキューレターと呼ばれる顧客の良質の声が届いているという。
社長の経歴も非常に興味深く、自営業だった実家での苦労からスーパーホテルまでの苦難の道がこのような思想に結びついたのだろう。また、現状に満足してはダメで、それはあくまで過去の実績のおかげであるという点もよかった。
新たなコンセプトとしてロハスも導入したり、今後は外国人宿泊客にフォーカスして、それに対応できる人材育成を行っているようだ。とても参考になった。
翻って、自分の仕事に考えてみると、PCというデバイスによって感性差別化ができないことを考えると、大いにギャップを感じる。その制約を乗り越えて自律感動型人間としてユーザーに感動を味わってもらえるコンセプトを考えてみたい。
目次
はじめに 「1円あたりの顧客満足度日本一を目指して」
第1章 「ぐっすり眠れなければ、宿泊費をお返しします」
―稼働率89%リピート率70%が続くホテル
第2章 「時代は必ずやってくる」
―スーパーホテルが生まれるまで
第3章 「満足以上の感動を目指して」
―「自律型感動人間」をつくるには
第4章 「人にしかできない仕事を助けるために」
―サービスの質を上げるIT戦略
第5章 「エコに協力できて、嬉しい」
―ロハス時代のホテルサービスとは
おわりに 「時代を読み、時代をつくるということ」
2013年10月20日日曜日
ベルクソン~人は過去の奴隷なのだろうかを読了!
なんとなく手に取ってみた。
ベルクソンは前々から気になっていたが、本書の副題「人は過去の奴隷なのだろうか」という問題提起に引き込まれたからだ。
全体的に哲学者の書という感じで少し冗長な感じではあるが、原著を紐解かなくてもベルクソンの主張を追う事ができるので良かった。
特にはじめにでのドリーの死やマイノリティリポートなどの下りは本論前に引き込むにはとても興味深い展開だった事を記載したい。
本書では第一部で「純粋持続」についての解説がなされ、第二部では「知覚」に関する話が展開される。
時間に関する事象では純粋持続がコアだと思うのだが、なかなか自分の中に落とし込めない概念だ。ベルクソンの言葉を記載しておく。
『要するに、純粋持続は、質的変化が次々に起こること以外のものではないはずであり、その変化は互いに解け合い、浸透し合い、正確な輪郭を持たず、互いに対して外在化するといういかなる傾向もなく、数とのいかなる近親性もない。それは純粋な異質性のはずだ。』
ということのようだ。むずい。
また、知覚に関しては人間の脳の側にあるという主張ではなく、対象物の表象に存在する物として定義づけている点はなかなか理解に及ばない。現代科学で否定されているようにも思えるが、走馬灯の話であったり、アフォーダンス的な観点では応用できなくもない考えなので、なんだかなぁという印象である。
とりあえず、人は過去の奴隷ではないという結論だが、なんとも言えない読了感であった。
目次
第1章 純粋持続を探せ
(量と質との戦い/純粋持続とはなにか)
『創造的進化』にまつわる間奏曲
第2章 押し寄せる過去と、自由の行方
(知覚という謎/記憶のありか/自由の泉)
2013年10月12日土曜日
世界初!マグロ完全養殖―波乱に富んだ32年の軌跡を読了!
何気なく図書館をブラウジングしていた時に気になって手に取って読んでみた作品。
近年、回転寿しもだいぶ定着し、かなり普及率も上がったが、水産資源の枯渇として危ぶまれているマグロの養殖に世界初で成功したとあって、非常に気になった訳だ。
近畿大学の水産研究所で32年間このプロジェクトに賭してきた熊井先生の半生を描いている。
気軽な気持ちで読んでみた物の、そのすさまじい半生の描写に引き込まれた。
研究とはいえ、資金を得ながらやるためにハマチや他の魚の養殖を行い、研究費を稼いでいた事。研究がなかなかうまくいかない最中に恩師が逝ってしまったこと。学位がないことで苦渋を強いられたことなど、抽象化すると全ての社会人に共通する教訓のようなものが多く得られた書籍だった。
また、水産資源としてのマグロも日本の消費だけでも世界の3分の1を占め、多くが輸入に頼っているそうだ。
この考え方は日本の政策の色々な箇所に見られる。税収で賄えない部分に国債発行をして財政を担保しているものなど顕著だろう。
このようにナレッジメントがあるので、国としても早期に体制を整え、国内での自給率を上げると同時に、アジア諸国に対して、そのナレッジを共有し、成功の暁には成果報酬フィーを一定率もらうような仕組みを整える事で、水産資源の枯渇にも対応し、かつ安定的な輸入経路の確保なども担保する事ができるのではないかと思うので、水産庁による英断を期待したい。
ボリュームもそこまでではないので、ぜひ読んでみてほしい1冊。
目次
挑戦のはじまり―まえがきにかえて―
国家プロジェクト/昭和45年という時代
第1章 クロマグロは養殖に向いた魚か
一生泳ぎ続けるクロマグロ
クロマグロはどこにいるのか
クロマグロの漁法
日本で生まれた延縄漁
畜養の欠点を解決する完全養殖
第2章 魚飼いの精神―近畿大学水産研究所
海を耕す
海への憧れ
運命のいたずら
ハマチを売って研究費を稼ぐ
家魚化をめざして―新たな挑戦
第3章 ヨコワ捕獲作戦
水産庁「マグロ類養殖技術開発企業化試験」
第一の壁―ヨコワの活け獲り
第二の壁 ―捕獲したヨコワの全滅/困難の克服 一度は諦めたケンケン釣りに活路
第4章 はじめての産卵からの長い道程
挑戦から10年、はじめての産卵
空白の11年と指揮官の死
強まるクロマグロに対する規制
「不可能を可能にするのが研究」
待ちに待った産卵再開/ようやくたどり着いた、 はじめての沖出し
突然の停電が問題解決の糸口に
一尾でも多くの成魚を育てるために
第5章 32年目の偉業
世界初の完全養殖
世界的研究拠点として
はじめての出荷と市場での評価
クロマグロの安全性
魚で起業する―養殖のノウハウの販売も視野に
第6章 完全養殖のめざすもの
安定した産卵
衝突死やパニック行動を抑える技術
「家魚化」に向けて
成長を早めるための「選抜育種」
完全養殖種苗用稚魚の出荷が始まった
輸入に頼るクロマグロの消費
世界的なマグロ消費の増加が意味すること
最終目標は天然資源の保護
終章 完全養殖を支えたもの
忍耐/観察眼/愛情
「私学」であることの誇りと反骨精神
教育者としての一面
47歳での学位取得
マグロと熊井の隠れた関係
2013年10月7日月曜日
ジェノサイドを読了した。
連続投稿!
2012年の本屋大賞にノミネートされた小説。
知人からの推薦で読むに至った。
600ページ弱の超大作だが、まったくもって分量は苦にならなかった。
なぜか?
それはそのストーリー、構成力全てが良かったからに他ならない。
内容に関しては、あらすじを抜粋。
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。
作品は人類学の観点や薬学、生物学、複雑系など多岐にわたる理論的な内容から戦争などの軍事的な内容までと幅広い分野のオンパレードだった。
大変示唆に富む内容が多く、目から鱗だった。
ふと思ったのは、この作品を読んでいる最中に、何か類似性作品がなかったかと思い出し、思い立ったのが、「BABEL」だった。
ブログ
映画「BABEL」を観ました
この中の神の視点のような描かれ方がけっこう多かったりする。
タッチもわくわくさせてくれるものであり、この本に出会えてよかった。ぜひ、この著者の別作も読んでみようと思う。
2012年の本屋大賞にノミネートされた小説。
知人からの推薦で読むに至った。
600ページ弱の超大作だが、まったくもって分量は苦にならなかった。
なぜか?
それはそのストーリー、構成力全てが良かったからに他ならない。
内容に関しては、あらすじを抜粋。
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。
作品は人類学の観点や薬学、生物学、複雑系など多岐にわたる理論的な内容から戦争などの軍事的な内容までと幅広い分野のオンパレードだった。
大変示唆に富む内容が多く、目から鱗だった。
ふと思ったのは、この作品を読んでいる最中に、何か類似性作品がなかったかと思い出し、思い立ったのが、「BABEL」だった。
ブログ
映画「BABEL」を観ました
この中の神の視点のような描かれ方がけっこう多かったりする。
タッチもわくわくさせてくれるものであり、この本に出会えてよかった。ぜひ、この著者の別作も読んでみようと思う。
2013年10月6日日曜日
神を見た犬を読了した。
ずいぶんと久々の更新となってしまった。
良い本を読んだのでしたためる。
イタリア人作家ブッツァーティの短編集。
本書には22編の短編が収録されている。
なぜかはわからないが、ブッツァーティーの「タタール人の砂漠」が読みたくて、探してたら、知人にこっちも面白いよと勧められ、先に神を見た犬を読了してしまったという具合。
でも、本当によかった。
各短編の内容は下記の目次の通り。
目次
1 天地創造
2 コロンブレ
3 アインシュタインとの約束
4 戦の歌
5 七階
6 聖人たち
7 グランドホテルの廊下
8 神を見た犬
9 風船
10 護送大隊襲撃
11 呪われた背広
12 一九八〇年の教訓
13 秘密兵器
14 小さな暴君
15 天国からの脱落
16 わずらわしい男
17 病院というところ
18 驕らぬ心
19 クリスマスの物語
20 マジシャン
21 戦艦《死(トート)》
22 この世の終わり
内容を書くとネタバレになるので、省略するが、巻末の解説に非常に的を得た記載があったので、それを抜粋し、紹介したい。
--------------------------------------------------------------------------------------
作品によってモチーフこそ異なるものの、どれもあらがう事の不可能な「破滅」や「死」と背中合わせの存在なのだ。ふりはらおうとすればするほどつきまとう悪夢の影を恐れながらも。破滅へと強烈に惹き付けられていく登場人物の焦燥感を描く事により、ブッツァーティーはわれわれを取り巻く不条理な状況や運命ともいえる神秘的な力、そして残酷なまでの時の流れを前に、人間がいかに無力な存在であるかを語りかけている。そこからは具体的な舞台設定、登場人物の性格など、いっさいのリアリティーが排除されているからこそ、時代や国境を超え、古びる事のない普遍的な価値を持ち続けているのだ。
--------------------------------------------------------------------------------------
こんなズバリ言い得た解説はなかなかない。
短編も色々な時期に書かれた物が収録されているので、たしかに全然趣向が異なる物もあったり、短い物は本当に短い。
そのため、1つ1つのストーリーを読み解くまでに時間を要する事もあるが、得も言われぬ読後感が各章を終えると心にこみ上げてくる。
「イタリアのカフカ」とも名称づけられたこの作家は、元々は新聞社の記者であったようで、働く事の葛藤なども持ち合わせたり、情念的な話もあったりと、かなり幅が広いように思える。
出世作である「タタール人の砂漠」はこれから読むがそちらも非常に楽しみである。
ぜひお勧めしたい1冊だ。
良い本を読んだのでしたためる。
イタリア人作家ブッツァーティの短編集。
本書には22編の短編が収録されている。
なぜかはわからないが、ブッツァーティーの「タタール人の砂漠」が読みたくて、探してたら、知人にこっちも面白いよと勧められ、先に神を見た犬を読了してしまったという具合。
でも、本当によかった。
各短編の内容は下記の目次の通り。
目次
1 天地創造
2 コロンブレ
3 アインシュタインとの約束
4 戦の歌
5 七階
6 聖人たち
7 グランドホテルの廊下
8 神を見た犬
9 風船
10 護送大隊襲撃
11 呪われた背広
12 一九八〇年の教訓
13 秘密兵器
14 小さな暴君
15 天国からの脱落
16 わずらわしい男
17 病院というところ
18 驕らぬ心
19 クリスマスの物語
20 マジシャン
21 戦艦《死(トート)》
22 この世の終わり
内容を書くとネタバレになるので、省略するが、巻末の解説に非常に的を得た記載があったので、それを抜粋し、紹介したい。
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作品によってモチーフこそ異なるものの、どれもあらがう事の不可能な「破滅」や「死」と背中合わせの存在なのだ。ふりはらおうとすればするほどつきまとう悪夢の影を恐れながらも。破滅へと強烈に惹き付けられていく登場人物の焦燥感を描く事により、ブッツァーティーはわれわれを取り巻く不条理な状況や運命ともいえる神秘的な力、そして残酷なまでの時の流れを前に、人間がいかに無力な存在であるかを語りかけている。そこからは具体的な舞台設定、登場人物の性格など、いっさいのリアリティーが排除されているからこそ、時代や国境を超え、古びる事のない普遍的な価値を持ち続けているのだ。
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こんなズバリ言い得た解説はなかなかない。
短編も色々な時期に書かれた物が収録されているので、たしかに全然趣向が異なる物もあったり、短い物は本当に短い。
そのため、1つ1つのストーリーを読み解くまでに時間を要する事もあるが、得も言われぬ読後感が各章を終えると心にこみ上げてくる。
「イタリアのカフカ」とも名称づけられたこの作家は、元々は新聞社の記者であったようで、働く事の葛藤なども持ち合わせたり、情念的な話もあったりと、かなり幅が広いように思える。
出世作である「タタール人の砂漠」はこれから読むがそちらも非常に楽しみである。
ぜひお勧めしたい1冊だ。
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