2013年10月12日土曜日
世界初!マグロ完全養殖―波乱に富んだ32年の軌跡を読了!
何気なく図書館をブラウジングしていた時に気になって手に取って読んでみた作品。
近年、回転寿しもだいぶ定着し、かなり普及率も上がったが、水産資源の枯渇として危ぶまれているマグロの養殖に世界初で成功したとあって、非常に気になった訳だ。
近畿大学の水産研究所で32年間このプロジェクトに賭してきた熊井先生の半生を描いている。
気軽な気持ちで読んでみた物の、そのすさまじい半生の描写に引き込まれた。
研究とはいえ、資金を得ながらやるためにハマチや他の魚の養殖を行い、研究費を稼いでいた事。研究がなかなかうまくいかない最中に恩師が逝ってしまったこと。学位がないことで苦渋を強いられたことなど、抽象化すると全ての社会人に共通する教訓のようなものが多く得られた書籍だった。
また、水産資源としてのマグロも日本の消費だけでも世界の3分の1を占め、多くが輸入に頼っているそうだ。
この考え方は日本の政策の色々な箇所に見られる。税収で賄えない部分に国債発行をして財政を担保しているものなど顕著だろう。
このようにナレッジメントがあるので、国としても早期に体制を整え、国内での自給率を上げると同時に、アジア諸国に対して、そのナレッジを共有し、成功の暁には成果報酬フィーを一定率もらうような仕組みを整える事で、水産資源の枯渇にも対応し、かつ安定的な輸入経路の確保なども担保する事ができるのではないかと思うので、水産庁による英断を期待したい。
ボリュームもそこまでではないので、ぜひ読んでみてほしい1冊。
目次
挑戦のはじまり―まえがきにかえて―
国家プロジェクト/昭和45年という時代
第1章 クロマグロは養殖に向いた魚か
一生泳ぎ続けるクロマグロ
クロマグロはどこにいるのか
クロマグロの漁法
日本で生まれた延縄漁
畜養の欠点を解決する完全養殖
第2章 魚飼いの精神―近畿大学水産研究所
海を耕す
海への憧れ
運命のいたずら
ハマチを売って研究費を稼ぐ
家魚化をめざして―新たな挑戦
第3章 ヨコワ捕獲作戦
水産庁「マグロ類養殖技術開発企業化試験」
第一の壁―ヨコワの活け獲り
第二の壁 ―捕獲したヨコワの全滅/困難の克服 一度は諦めたケンケン釣りに活路
第4章 はじめての産卵からの長い道程
挑戦から10年、はじめての産卵
空白の11年と指揮官の死
強まるクロマグロに対する規制
「不可能を可能にするのが研究」
待ちに待った産卵再開/ようやくたどり着いた、 はじめての沖出し
突然の停電が問題解決の糸口に
一尾でも多くの成魚を育てるために
第5章 32年目の偉業
世界初の完全養殖
世界的研究拠点として
はじめての出荷と市場での評価
クロマグロの安全性
魚で起業する―養殖のノウハウの販売も視野に
第6章 完全養殖のめざすもの
安定した産卵
衝突死やパニック行動を抑える技術
「家魚化」に向けて
成長を早めるための「選抜育種」
完全養殖種苗用稚魚の出荷が始まった
輸入に頼るクロマグロの消費
世界的なマグロ消費の増加が意味すること
最終目標は天然資源の保護
終章 完全養殖を支えたもの
忍耐/観察眼/愛情
「私学」であることの誇りと反骨精神
教育者としての一面
47歳での学位取得
マグロと熊井の隠れた関係
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