ずいぶんと久々の更新となってしまった。
良い本を読んだのでしたためる。
イタリア人作家ブッツァーティの短編集。
本書には22編の短編が収録されている。
なぜかはわからないが、ブッツァーティーの「タタール人の砂漠」が読みたくて、探してたら、知人にこっちも面白いよと勧められ、先に神を見た犬を読了してしまったという具合。
でも、本当によかった。
各短編の内容は下記の目次の通り。
目次
1 天地創造
2 コロンブレ
3 アインシュタインとの約束
4 戦の歌
5 七階
6 聖人たち
7 グランドホテルの廊下
8 神を見た犬
9 風船
10 護送大隊襲撃
11 呪われた背広
12 一九八〇年の教訓
13 秘密兵器
14 小さな暴君
15 天国からの脱落
16 わずらわしい男
17 病院というところ
18 驕らぬ心
19 クリスマスの物語
20 マジシャン
21 戦艦《死(トート)》
22 この世の終わり
内容を書くとネタバレになるので、省略するが、巻末の解説に非常に的を得た記載があったので、それを抜粋し、紹介したい。
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作品によってモチーフこそ異なるものの、どれもあらがう事の不可能な「破滅」や「死」と背中合わせの存在なのだ。ふりはらおうとすればするほどつきまとう悪夢の影を恐れながらも。破滅へと強烈に惹き付けられていく登場人物の焦燥感を描く事により、ブッツァーティーはわれわれを取り巻く不条理な状況や運命ともいえる神秘的な力、そして残酷なまでの時の流れを前に、人間がいかに無力な存在であるかを語りかけている。そこからは具体的な舞台設定、登場人物の性格など、いっさいのリアリティーが排除されているからこそ、時代や国境を超え、古びる事のない普遍的な価値を持ち続けているのだ。
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こんなズバリ言い得た解説はなかなかない。
短編も色々な時期に書かれた物が収録されているので、たしかに全然趣向が異なる物もあったり、短い物は本当に短い。
そのため、1つ1つのストーリーを読み解くまでに時間を要する事もあるが、得も言われぬ読後感が各章を終えると心にこみ上げてくる。
「イタリアのカフカ」とも名称づけられたこの作家は、元々は新聞社の記者であったようで、働く事の葛藤なども持ち合わせたり、情念的な話もあったりと、かなり幅が広いように思える。
出世作である「タタール人の砂漠」はこれから読むがそちらも非常に楽しみである。
ぜひお勧めしたい1冊だ。
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