2012年12月23日日曜日
100年先を読む―永続への転換戦略を読了
100年先を読むというタイトルの本。なかなか未来のことを予見するというのは難しいものであるが、著者の月尾さんの幅広い知識による内容には舌を巻いた。
そもそも僕がこの本のことを知ったきっかけはMITの石井裕先生の講演を聞いた際に、先生がオススメしていたことがきっかけだった。
なるほど、識者によるレコメンドに耐えうる素晴らしい内容であった。
内容は直近の出来事や東日本大震災に関する話から、古くはカルタゴの歴史まで機知に富む内容の数々であり、バリエーションの豊富さが著者の叡智を物語るかのような内容であった。
ほとんどすべてが重要な個所だったと思うのだが、個人的に最も共感したのは日本の箱もの行政の継続性の欠如に関する指摘である。
折しも最近、トンネルの落盤事故によってその事実が浮き彫りになったわけであるが、昨年の段階ですでに指摘をされていることだ。
また、循環型社会の件にも触れられているのだが、ここでも思う点が多々あった。私は東京に住んでいるのだが、東京は人工物ばかりでなく、自然と共生しようと人工物と自然が混在している。
しかし、その維持管理コストについては、かなりの負担があると思う。
例えば、秋から冬にかけて紅葉が散っていく時期だが、通常の自然環境では落ち葉による堆積が土壌に対しての養分となるエコシステムがあるのだが、東京の場合、下はコンクリートであるため、放置すると景観が崩れてしまう。そこで、人が介在し、その落ち葉を除去するのだが、本来であればうまくサイクルが回っていたはずが、人工介在によって崩されてしまっているよい例なのではと感じている。
他にも枚挙にいとまがないのだが、キリがないので、この辺で。
本書は多くの人に読んでもらうべきだと思うし、日本の良さを今一度再考でき、認識することのできる内容であるため、僕も人にオススメしていきたいと思う。間違いなく星は5つ。
■目次
第1章 開発から回復へ
(「はなやか」で「はかない」人間地球の限界を突破した人類 ほか)
第2章 拡大から縮小へ
(有限の地球に必要な縮小への転換日本発の縮小文化を世界へ ほか)
第3章 画一から多様へ
(画一的な時間感覚からの脱却効率から多様への転換 ほか)
第4章 物質満足から精神満足へ
(反面教師カルタゴの遺訓精神文化の衰退が国家を滅ぼす ほか)
第5章 震災を越えて
(計画停電から計画節電への転換節電は日本の構造転換の契機 ほか)
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