黒木亮氏の著書。
本書のテーマは格付。
リーマンショックを引き起こしたウォール街の一躍を担ったと言われる格付け会社の暗躍を描いた小説。
上下巻で大体600ページ強の大作である。
構成としては、バブル前の1980年代から格付けを中心とした金融ビジネスの変遷を史実に基づいてフィクション化した内容である。
上巻では主に2000年頃までを描き、中心は山一証券や北海道拓銀などの破綻などの騒動を格付けを中心として描いている。
下巻では2000年以降の格付けの急拡大。CDSやCDOのビジネス案件の拡大やコーポレート格付、ソブリン格付けなどの内容や、サブプライムローン、そしてリーマンショックなどについて描かれている。
格付けを巡って、各社のアナリスト、営業、経営、発行体などの思惑が巡るストーリー展開は大変に面白い。
主要人物の乾の家族模様がなぜか障害者の娘を持ち、大変な日常も経験しているという描写がなぜ必要だったのか、個人的には解せないが、それもまたいいスパイスになっていたようにも思う。
本書は格付けのビジネスオリエンティッド化によるモラルハザードや癒着により、中立性が保たれていかなくなり、市場のモメンタムに流されて、最終的には取り返しのつかないほど大きな影響を与えてしまうという内容が描かれている。
特に投資家サイドを主張するアナリストとビジネス主体で発行体を主張する駆け引きのシーンについては大いに考えるべき点があったように思える。
私も少なからぬ似たような経験を持っており、その時はどこの主体を軸にすべきなのかを熟考したものだ。
最後のエピローグで今後の日本の見通しについての件があるのだが、
「日本人は一度焼け野原にならなければ気づかない。一度そうなったら団結して問題に取り組む」
というような表現がある。
これはまさに今現在、私も似たような考えを持っている。
国家の収入と予算、そして支出額を勘案したところの異常な数値。国債発行による時間差もそろそろメッキがはがれてくるころだろう。
このクラッシュをいかにして乗り越えることができるのか?という点に日本の力量が試されてくるだろう。
金融関係者であれば、ぜひ一読したいすばらしい内容である。
おすすめです。
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